その17 : 雪を食べる

僕がスキー場のバイトに行っている間、あおいはどのような生活をしているのだろうか。

雪かき、散歩などで屋外にいる時以外は、2階の陽のあたる4畳半で暮らしているらしい。この4畳半には常に10冊ほどの小説が散乱しており、コーヒーの道具と寝袋がストーブのそばに置いてある。まさに彼女にとっては「極楽」の状態だ。この寝袋に入って(さすがに元ワンゲルだ)、小説を読むのが無常の喜びであるとのことだ。そしてもらいもののチョコレート、クッキー類を持ちこんで、登山用のガスコンロをボワー!と点火し、お湯をわかしてもらいもののコーヒーを飲むというのがいつものパターンだ。

でも、「部屋の中」なのだ。「キャンプとかんちがいするな!」としばしば注意するが、聞く耳を持たない。「これが楽しいのに〜」などと笑って言う。雪で閉ざされ、あまり山に行けないうっぷんをここで晴らしているのだろうか。

うちのニワトリ達は雪に閉ざされても元気いっぱいだ。トリ小屋のドアを開ける時、中に雪が入ると、競うようにしてその雪をつついて食べている。ノドが渇いているのか、何かつつくものが欲しいのか、とにかくトリたちは雪を好んで食べる。

あおいも雪を好んでよく食べる。散歩しながら、雪かきしながら、近くの雪をサッとすくって、ジャクジャク食べている。確かにこの辺の雪は、大宮の雪のようにホコリっぽくなく、澄んだ水の味がする。

ある大雪の翌日、あおいが「雪を食べたい」と言うので、「食べれば。」と言うと台所からラーメンのドンブリとスプーンと三温糖を持ってきた。そしてドンブリに山盛りいっぱいに真っ白な雪を入れ、軽く押さえつけ、更に雪を入れて、三温糖をふりかけ、「いただきまあす」と言って、ガバガバ食べ始めた。

すごい勢いでどんどんどんどんどんどん食べていくのを見て、僕はこわくなり、ドンブリを取り上げて「バカ、腹をこわすぞ!」と中身を捨ててしまった。あおいは「ああ!もったいない、なんてことするの!」とボウゼンとした顔をしていたが、やがて2人とも大笑いしてしまった。

そんなあおいが、今度、部落の「食生活改善委員・理事」に選ばれたという、この皮肉・・・・・。みなさんはどう思われますか?

(2001.3.11)
30. わびしすぎた「ワカメいため」
29. ざるそば地獄
28. カレーはまずく作れ
番外編7. “ステキ”な暮らしは
遠く

27. カステラ・クリスマス
26. お菓子のライバル
25. 桜エビさえあれば・・・
24. おかゆ生活を偲ぶ
23. 「ワカメ炒め」VS
「マヨネうどん」

番外編6. 倹約妻との日々
番外編5. 雪の中のニ人
番外編4. 婚前旅行の思ひ出
22. つわりの終わり
番外編3. カラマーゾフのヤギ
番外編2. 貧しい食卓
21. あおいのつわり
番外編1. 農民あおい
20. 「コーシー」中毒
19. 肉なし「肉まん」
18. コロッケにあこがれて
17. 雪を食べる
16. 幻の愛妻弁当
15. アケビのヤケ食い
14. 村のおやつ
13. 確信の食事ぶり
12. キノコの道
11. ろくさんのイワナ
10. お菓子の家
09. ついに肥料まで・・・
08. オカラを取られたトリ
07. 怒涛のスイカ
06. うちのニワトリを食べる
05. さまざまなモチ
04. 「お好み焼き」の連続食い
03. 栗ごはんの日々
02. 熊のスパゲティ
01. 「玄米きりたんぽ」の末路
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