|
その7 : 怒涛のスイカ
|
 |
羽後町のスイカ農家から、出荷もれのスイカをもらった。
「とり残しが畑にころがっているから、取りに来なさい」と電話があり、行ってみるとある、ある。
3反ほどの畑にゴロゴロと巨大なスイカが数百個はある。軽トラを移動させては積んでいく。
5〜6個ももらえればいいと思っていたのが、実に42個もいただくことになった。「どうせトラクターでつぶしてしまうんだから。ニワトリにやってもいいし」とおじさん。私たちも自分の畑で何株か作っていて、やっとソフトボールくらいになったとか言って喜んでいたのが、これだけのスイカを見せられると、スイというものの概念自体が根底からくつがえされてしまう。
「ともかく消費しなくては」まず日頃お世話になっているお隣やロクさんなどにひととおり配り、残った30個余りを物置に積みあげる。
「最低でも一日一個は食おう。」とりあえず8キロ程の大玉の4分の1ずつを皿にのせ食べ始める。甘い。それでいてグミグミしていない。いわゆる「シャリッ気」がある極上品。出荷もれとは言え、さすがプロの作品だ。
あおいは期待どおり猛然とザブザブ食い進んでいる。本当にこういう局面で頼りになる女だ。
しかし後半さすがにペースが鈍ってきた。無理もない。2リットル近い水分を一気飲みしているようなものなのだ。なんとか食べ終わると、二人とも仰向けのまま動けなくなってしまった。
あおいも珍しく苦しげだ。
さしもの歴戦の覇者も、この怒涛のような果汁の怪物の攻撃にはまいったようだった(それでもかなり皮の青い方まで食べていた。習慣とはそういうものだ)。
「午後にもまた食うんだぞ。」
「水分をひかえなくちゃ。」
「そうだ、これから水もお茶も禁止して、一日に必要な全水分をスイカからとるようにしよう。」
しかし、午後にはさっきの量の半分ほどしか食べられなかった。
ニワトリたちにも与えてみた。最初の数日は争ってつつき、首から上をベタベタにしながら食べていたが、次々に放りこまれるスイカに、日に日に戦意を失っていた。
私たちも雨の日や涼しい日にはなかなか食べられない。赤い部分を取り出してナベで煮て、スイカ糖を作ったりもしたが、焼け石に水だった。
スイカをもらって8日が経った今でも、物置に20個程のスイカが積まれている。
(2000.8.16)
|
 |
|
|
|