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その20 : 「コーシー」中毒
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「そろそろ休憩にして、もらったお菓子でも食べるか」僕がまき割りの手を止めて言うと、「やったあ!じゃあ私はコーシーいれてもいい?」とあおい。
大のコーヒー好きで秋田に来る時も「どんな粗食でもいいけど、コーヒーだけはやめられないかも」と言っていた。たまに十文字町のスーパーで、できるだけ安くて量の多いインスタントコーヒーを買いこんでくる。銘柄にこだわりはなく、「黒くて苦ければいい」と言っている。
朝ご飯を食べ、畑へ行こうとすると、「ちょっと待って」と、アウトドア用ガスコンロに点火し、お湯を沸かしてはコーヒーを一杯分作る。本当にコーヒーに関してはマメだ。
僕はと言えば、全く逆で、全然飲まない。嫌いなのではなく、ちょっとでもコーヒーを口にすると、一睡もできなくなってしまう「過敏症」なのだ。コーヒーゼリーでもダメだ。わからないように食べ物に入れてあってもダメ。カフェインの暗示に完全にかかっている。だからあおいも、魚の絵のついた大きな自分のカップになみなみとブラックコーヒーをついだ後、僕の小さなぐい飲みに白湯を少し注いで持ってくる(僕は量を飲むのもダメ)。
毎晩、コーヒーを飲みつつ「テケテケ日記」を打ちこむあおい。画面を凝視し、両手もふさがっている彼女の口に、親切心で「豆入りおかき」を入れてみた。ボリボリと音をたてて、おかきは口の中に消えていった。彼女の体勢には何の変化もなく、何事もなかったようにカタカタとキーをたたき続けている。
次に「アスパラガス」というビスケットを口に差しこんでみると、くわえタバコのような状態から、サクサクサクとしだいに短くなり、やがてなくなった。何かの機械かポストを見ているようで面白くなった僕は次に、頂きもののチョコレートを口にいれてみようとした。すると、「あっ、これはやめて!これはコーシーいれてからでないと」と言って台所に2杯目をいれに行った。いろいろと難しいルールがあるらしかった。ちなみにアイスクリームなども「コーシー」が欠かせないとのことだ。
でも倹約家のあおいはコーヒーの出費が気になるらしく、いずれは「ドングリコーヒー」や「タンポポコーヒー」へ切りかえることも考えているらしい。とにかく「コーシーは黒くて苦ければいい」のだから。
(2001.6.22)
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