その26 : お菓子のライバル

さる新年会で、食事の後に様々なお菓子、ケーキ類が、どっさりとデザートとして出されたことがあった。当然、あおいの目の色は輝き始めた。

「これ、私食べていいの?」

「お前一人で食べるんじゃないからな。」

と釘をさすと、酔った和尚が余計なことを言う。

「いいんだ。あおいちゃんに好きなだけ食わせてやれ。」

「え、本当お?じゃ、そうするね。」

と言ってあおいは、クリームをたっぷり巻いたクレープ状のもののビニールを、普段にはないテキパキとした動きでむき、幸せそうにかぶりついた。

そこまでは、まあ、いい。

しかし、次も、その次も、数ある他の菓子には目もくれず、そのクリーム・クレープだけにあおいは手を伸ばした。みんなアゼンとした顔で見ている。

そして、ついに四連続でクレープを食べ始めた時、僕はさすがに夫として、口をはさまずにはいられなかった。

「おい、そういう食い方はよせ。」

「なんでぇ?これがいいのに。」

あおいの言い分はこうだ。同じ甘い物を食べ続けていれば、そのうちに気持ちが悪くなって、限界が来る。そこでストップできる。が、いろいろ取りまぜて食べていくと、その都度「口直し」されて、半永久的に食べ続けてしまう、と。

「でも世間的にはそうだぞ。ぜんざいには塩コブやタクアンがついてるじゃないか。」

「あれが困るんだ。あんなことしたら、永遠にぜんざいが終わんない!」

でも、たとえ、あおいの好きな「甘くて、しつこいもの」を一種類だけ食べ続けたとしても、彼女は滅多なことでは気持ち悪くなったりはしないので、結局どこまでもいってしまうことになるのだ。


あおいは最近、お古の学習机をもらってパソコン・デスクにしているのだが、引出しを開けてみて驚いた。

もらいもののチョコレートの詰め合わせ、クッキー、キャンディー、ハイチュウなどが整理されて入っていて、「今日は二段目の引出しのポッキーでコーシー飲むか」というふうな極楽生活を満喫しているようだった。

先日、僕が「健康のために甘い物は控えるよ」と言った時、「うん、うん、うん。それがいいよ!」とヤケに賛成していたが、こういうことをカゲで着々と進めていたのだ。


最近のあおいの心配事は、春がお菓子を食べるようになって、自分の取り分が減ってしまうことだという。

「ああ、お菓子の嫌いな子になるといいな。それともかえって「お菓子好きな子」ってことになれば、いろんな人からもっともらえたりして・・・。うーん、どうしよう!?」

こんなふうにしか我が子のことを考えられない母親・・・やはり問題ありますよね? 

(2003.1.28)
30. わびしすぎた「ワカメいため」
29. ざるそば地獄
28. カレーはまずく作れ
番外編7. “ステキ”な暮らしは
遠く

27. カステラ・クリスマス
26. お菓子のライバル
25. 桜エビさえあれば・・・
24. おかゆ生活を偲ぶ
23. 「ワカメ炒め」VS
「マヨネうどん」

番外編6. 倹約妻との日々
番外編5. 雪の中のニ人
番外編4. 婚前旅行の思ひ出
22. つわりの終わり
番外編3. カラマーゾフのヤギ
番外編2. 貧しい食卓
21. あおいのつわり
番外編1. 農民あおい
20. 「コーシー」中毒
19. 肉なし「肉まん」
18. コロッケにあこがれて
17. 雪を食べる
16. 幻の愛妻弁当
15. アケビのヤケ食い
14. 村のおやつ
13. 確信の食事ぶり
12. キノコの道
11. ろくさんのイワナ
10. お菓子の家
09. ついに肥料まで・・・
08. オカラを取られたトリ
07. 怒涛のスイカ
06. うちのニワトリを食べる
05. さまざまなモチ
04. 「お好み焼き」の連続食い
03. 栗ごはんの日々
02. 熊のスパゲティ
01. 「玄米きりたんぽ」の末路
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