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その25 : 桜エビさえあれば…
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天気予報を見ていると、2人ともイジケてくる。
「雪は秋田県内陸の一部だけだって。」「どうせここがその一部なんだよね。」
「そうそう。あ、最高気温が3度で小雪だって。」「どうせ、ここは氷点下で暴風雪とかなんだよね。」
とにかく冬季この村は天気が悪い。二人とも滅入ってくる。
「東京の明日は快晴だって。」「んなこと聞きたくもない!」プチ、とテレビを消したくなる。
あとよく見るのは料理番組。
「ショウガとネギを良く炒めるんだって。」「ふむふむ、それで?」
「あ、ホタテの貝柱を入れた・・・」「何それ!そんなもん入れたら、うまいに決まってるじゃん。ズルい!」
そう、材料にムキエビとか生クリームとか、我が家にないものが出てくると、とたんに不機嫌になってくる。「牛ヒレ肉」なんて出てくると、やっぱりプチ、とテレビを消したくなる。
「やっぱりさあ、身近なもので驚くほどうまいものができちゃうっていう企画でないとね。」などとムリなことを言い合う。
そんな僕たちの目にとまったのが、もらった「桜エビ」だった。当初、お好み焼きに入れるくらいのものだったが、野菜炒めに入れて好評を博して以来、いろいろなものに投入されるようになった。何しろ料理にうま味と豪華さが加わった。
チャーハンには必ず加え、「エビチャーハン」。納豆にも細かくくだいて入れた。きざみネギと桜エビを入れた卵焼き「エビネギ・タマゴ」は我が家の定番メニューになるほどのヒットとなった。
写真はイメージです
なにしろ「エビ」なのだ。いかんせん小さすぎてエビフライにはムリだが、漢字で書けば「海老」というイセエビなんかと同じ「エビ」なのだ。うまくないはずがない。
しかも大袋入りの桜エビは、僕たちのように一つまみずつチビチビ使えばいつまでもなくならない。経済的な食材だ。
しかし、いよいよ桜エビの袋が空になる時は来た。来客があって、得意の「エビ・ネギ」をやろうとして、それがないことに気付いた僕はすっかり動揺した。「うーん、お客には自家製野菜と卵でうまい料理を出してやりたいんだがなあ・・・。くそう、桜エビさえあれば
・・・」。
(2002.11.26)
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