その18 : コロッケにあこがれて

埼玉でつきあい始めた頃から、僕らは決して喫茶店やファミリーレストランなどには行かないカップルだった。主にあおいが「もったいない」と言ってイヤがったからだ。

「じゃあ、夕めしはどうする?」と聞くと、決まって「コロッケ。」と言う。近くのスーパーに行き、閉店まぎわで安くなった惣菜コーナーで、50円くらいのコロッケを3種(コーン、野菜、カボチャ、1個半ずつ食べる)と、カッパ巻き(100円)に、デザートの草大福(70円x2)を買う。

「お茶は持ってきてるから。」と、あおいは「テルモス」というアウトドア用ポットの入った手提げをたたく。土手のそばの水路に沿った細長い公園まで散歩をし、そこのベンチで夕涼みをしつつ、それらを食べた。「1人200円ですんだね。」とあおいはうれしそう。ソースは付いていたが、ハシがなかったので、指を油でベトベトにしながらかぶりついた・・・これが当時の僕らの典型的なデートであった(かなりわびしいが)。

秋田に来て長らくコロッケを食べていなかったので、あおいの「コロッケ欲」が頂点に達していた頃、ついにパン粉が導入され、我が家のジャガイモを使って、コロッケを作ることになった。

あおいが作るコロッケは巨大なものであった。扁平でなく、いなりずし型の(ただしそれを5倍くらいにした)もの。それが12個もある。

「ちょっと作りすぎじゃないか」と言ったが、「いいの、私がたべるから。ひたすら。」と、平気な顔だ。

さすがに揚げたてはうまい。表面がカリッとしていて、中はホクホクだ。半分はカレー粉を入れたカレー・コロッケにしてあった。ソースをドクドクとかけて、夢中で食べた。でも玄米飯を食べながらなので、そう何個もは食べられない。結局、僕が3個半、あおいが5個でダウン。翌日のおかずに回すことになった。

先日、十文字のスーパーに行った際、「あの埼玉のコロッケ・デートを再現してみよう」ということになり、惣菜コーナーをのぞいてみた。2種類のクリームコロッケ (カニ・ホタテ)を買い、ふと思いついて食パン(8枚、125円)も買った。コロッケを2つにちぎり、お互い両方を味わえるようにして、食パンにはさみ、コロッケ・パンとした。4枚余ったパンは夕食用に持ちかえることにした。「この食事は1人100円を切ってるよ。」「画期的だ。」などと二人で喜んだ。

味もなかなか良かったが、あの自家製の巨大コロッケにはおよばなかったようだった。

(2001.3.31)
30. わびしすぎた「ワカメいため」
29. ざるそば地獄
28. カレーはまずく作れ
番外編7. “ステキ”な暮らしは
遠く

27. カステラ・クリスマス
26. お菓子のライバル
25. 桜エビさえあれば・・・
24. おかゆ生活を偲ぶ
23. 「ワカメ炒め」VS
「マヨネうどん」

番外編6. 倹約妻との日々
番外編5. 雪の中のニ人
番外編4. 婚前旅行の思ひ出
22. つわりの終わり
番外編3. カラマーゾフのヤギ
番外編2. 貧しい食卓
21. あおいのつわり
番外編1. 農民あおい
20. 「コーシー」中毒
19. 肉なし「肉まん」
18. コロッケにあこがれて
17. 雪を食べる
16. 幻の愛妻弁当
15. アケビのヤケ食い
14. 村のおやつ
13. 確信の食事ぶり
12. キノコの道
11. ろくさんのイワナ
10. お菓子の家
09. ついに肥料まで・・・
08. オカラを取られたトリ
07. 怒涛のスイカ
06. うちのニワトリを食べる
05. さまざまなモチ
04. 「お好み焼き」の連続食い
03. 栗ごはんの日々
02. 熊のスパゲティ
01. 「玄米きりたんぽ」の末路
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