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その13 : 確信の食事ぶり
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リンゴをたくさんもらったので、二人で食べようと皮をむいていると、「私、いらない。」と言う。
えっ、あおいが「いらない」なんて!とうとう食べ過ぎで胃をこわしたのか。
好評連載中の「妻食べ」のコーナーはどうなる・・・・。
しかしよく聞いてみると、彼女は生のリンゴをかじると、口の中やのどがかゆくなることがあるので、少し控えてみただけのことらしかった。煮リンゴともなれば大量に食べる。
小ぶりのなべ一杯くらいは、あっという間に食べてしまう。切ったリンゴをそのまま火にかける。水も砂糖も入れない。それで充分甘い。
「ふじ」などを使うと甘すぎるくらいだ。
生リンゴも、食べる時には芯まで完全に食べてしまうのが彼女だ。僕も最初、リンゴを食べ終わった彼女の手に何も残っていないのに驚いたものだった。「なんでみんな芯を残すのかわからない」と言う。ナシも「芯まで」だ。あのガリガリとした芯が、「噛み応えがあって好き」と言う。妙な食習慣があったものだ。
柿もたくさんもらったので、しょっちゅう食べている。メールをうちながら、本を読みながら、いつも「ブチュッ」とかぶりついている。そして部屋のいたるところに「ヘタ」だけが置き去りにされている。
その日の夕食は、塩ジャケ、みそ汁、漬物少々。そこにあおいが大きな鉢に山盛りの大根おろしを持って来た。「そんなにたくさんどうするんだ。」と言うと、「えっ、普通だよお。私が食べるから安心して。」とあおい。
あおいはまず、みそ汁にとりかかる。ひたすらみそ汁だけに集中し、いきなり飲み終えてしまう。みそ汁が冷めてしまうのが許せないのだそうだ。それからシャケの切り身の上に、シャケ本体が隠れるくらい大量のおろしをのせて食べ始める。大体シャケの切り方が分厚すぎる、と僕は思う。6センチはある。少量の塩気があればご飯が食べられる僕とは違って、あおいは大胆だ。
「一人2切れずつ」と思って僕が切ったキュウリのたまり漬け4切れのうち、いきなり3切れをまとめてハシでつまんで、バリバリと食べてしまった。「よく見れば2切れずつだってわかりそうなものなのに・・・」などと僕がいつまでもクヨクヨしていると、「あっ、それいらないの?」と僕の皿のシャケにハシをのばす。彼女は、魚は皮の方が本体よりも好きなくらいなのだ。その皮で、ご飯をのり巻きのようにくるんでパクンと食べてしまう。
そしてひととおり食事が終わる頃に、彼女はみそ汁をストーブで再び温めはじめ、最後にもう一杯、熱いところを飲む(だから三杯分つくってある)。
終始、確信に満ちた食事ぶりに、思わず感心したものだった。
(2000.12.14)
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